静かな境内に響く怒声と失望。SNSで拡散する「御朱印」トラブルの凄惨な現場と、2026年の信仰のかたち
御朱印 ひどい——検索窓にこの言葉を打ち込むと、目を疑うようなエピソードが次々と画面を埋め尽くす。待ち時間に苛立った参拝者が巫女に向かって暴言を吐く短尺動画、フリマアプリに数万円で出品される限定の授与品、そして粗雑に払われた墨字にショックを受けたという投稿。神聖な祈りの場であるはずの神社仏閣が、今や一部の過熱した収集家と疲弊する現場の過酷な摩擦の場と化している。
京都の有名寺院で長年授与所を担当する僧侶は、重い口を開いた。「本堂への参拝すら済ませず、朱印帳だけを突き出して『早くしろ』と迫る方も珍しくありません。このような暴挙が続けば、ネット上で御朱印 ひどいと騒がれてしまうのも無理はないでしょう。本来の『納経の証』という意義はどこへ消えてしまったのか」。かつて静寂に包まれていた境内の空気は、どこか刺々しく、歪んだ熱気に支配されつつある。
「書いてやった」のか「頂戴した」のか——すれ違う双方の主張

トラブルの根底にあるのは、授与する側と受ける側の致命的な価値観のズレだ。参拝客の多くは「対価としてサービスを買っている顧客」の意識で並ぶ。一方、神社や寺院にとって御朱印は売買する商品ではなく、祈りを捧げた証として授ける「授与品」である。
「3時間並んだのに文字が下手すぎる」「対応した神職の態度が生返事で不快だった」といった参拝者側の不満。その裏返しとして、「理由もなく書き直せと要求された」「記帳中にスマホで無断撮影された」という寺社側の悲鳴がある。お客様気取りの参拝者と、押し寄せる人波に忙殺され余裕を失った現場。双方の感情が対立の火種となっている。
オークションで10万円? 転売ヤーの標的となる「限定御朱印」
状況をさらに悪化させているのが、限定御朱印を巡る過剰なプレミアム化だ。季節限定、雨の日限定、切り絵や金箔を施した特別なデザイン——これらが登場するたび、境内には開門前から長蛇の列ができる。その中には、転売目的で並ぶ「転売ヤー」の姿も少なくない。
フリマアプリを開けば、数時間前に授与されたばかりの限定御朱印が、元の初穂料の十数倍という異常な価格で取引されている。純粋な信仰心や旅の思い出ではなく、金銭的な価値やSNSでの「いいね」を獲得するための道具として消費される現状に、多くの寺社が強い憤りを募らせている。
「投げ返された」「雑すぎる」――授与所側の疲弊と対応の限界

だが、問題は参拝者のマナーだけに留まらない。受け取った御朱印帳を開いて絶句したという書き込みも後を絶たない。「殴り書きのような文字」「ページからはみ出た大きな朱印」「ため息をつきながら雑に手渡された」という体験談だ。
人手不足に悩む地方の小規模な神社や寺院では、連日押し寄せる何百人もの対応によって、精神的・肉体的に限界を迎えている神職や僧侶も多い。一枚一筆に心を込める余裕など、疾くに奪われているのだ。結果として粗雑な対応を生み、それが参拝者の失望を招くという負の連鎖が断ち切れずにいる。
直書き廃止と完全予約制——2026年、神社仏閣が下した苦渋の決断
こうした荒廃を受け、2026年の現在、全国の主要な寺社ではドラスティックな対策が進んでいる。伝統的な「持参した朱印帳への直書き」を全面取りやめ、あらかじめ紙に書かれた「書き置き」のみの対応へ切り替える動きが急速に広がった。
一部の人気の高い神社では、混雑緩和と転売防止のために完全オンライン事前予約制を導入。参拝時の身元確認を義務付けるケースまで出てきている。旅の途中でふらりと立ち寄り、目の前で墨を磨ってもらう——そんな昔ながらの風情ある光景は、もはや過去のものとなりつつある。
「スタンプラリー化」するブームの影で失われた信仰の心
御朱印ブームがもたらした最大の弊害は、参拝という行為そのものの形骸化かもしれない。朱印帳を埋めること、珍しいデザインを集めること自体が目的化し、本堂や本殿の前で手を合わせることすら忘れてしまう人が増えた。
拝観料を払ったのだから何をしてもいいという横柄な態度、撮影禁止区域での強引な撮影、順番待ちを巡る割り込みや暴言。神聖であるべき境内で繰り広げられる不快な光景に、一般の参拝客からも「せっかくの参拝が台無しになった」と落胆の声が上がっている。
本来の姿を取り戻すために——授与品と向き合う旅人のあるべき姿
御朱印は、単なる旅の記念スタンプでも、他人に誇示するためのコレクションでもない。その土地の神仏と向き合い、祈りを捧げた時間とご縁を形にしたものだ。
境内の静寂を守り、まずはしっかりと感謝の祈りを捧げること。長時間待たされても感謝の気持ちを忘れないこと。そして授ける側も、一枚の紙の向こうにある参拝者の思いに心を寄せること。荒れ果てたブームの熱狂が冷めつつある今、私たち一人ひとりが「参拝の本質」を問い直す時期に来ている。 (出典: 御朱印 ひどい(Yahoo!ニュース))