金メダルの栄光を捨てて店頭に立つ男。2026年、船木和喜がアップルパイの香りに託した未来への飛翔
船木 和 喜 アップル パイは、単なるタレントショップの気まぐれな商品でも、一時的な話題づくりでもない。1998年長野オリンピック、あの美しい飛行曲線で世界中を魅了し、2つの金メダルを日本にもたらしたスキージャンプ界のレジェンド・船木和喜。彼が自ら焼きたてのパイを店頭に並べ、エプロン姿で笑顔を振りまく光景は、2026年の今や全国の有名百貨店で風物詩となっている。かつて世界の頂点に立った英雄が、なぜ泥臭く催事場の店頭に立ち続けるのか。そこには、スポーツビジネスの常識を覆す熱いドラマがあった。
全国各地で開催される物産展やイベント会場に足を踏み入れると、芳醇なバターと香ばしい甘香が漂い、絶え間ない行列が出現する。多くの人々が焼き上がりを心待ちにする船木 和 喜 アップル パイの売上は、実はその大半がウインタースポーツを担う子どもたちの遠征費や用具購入代金として寄付されている。企業スポンサーだけに頼らず、自力で資金を生み出し若手を支える。この型破りなスタイルこそが、スイーツファンだけでなく多くのスポーツファンの心を強く揺さぶり続けている理由だ。
長野五輪から28年、金メダリストが催事場のカウンターに立ち続ける理由

飛行中の完璧なフォームでジャッジ全員から「20点満点」を叩き出したあの快挙から28年。時の流れは早いものの、船木和喜の熱意は何一つ衰えていない。彼がこのビジネスを立ち上げた背景には、現役時代から抱き続けてきたウインタースポーツ界への強い危機感があった。
マイナー競技とされるスキージャンプでは、どれほど才能があっても経済的な理由で競技を諦めざるを得ない若者が後を絶たない。道具一式を揃えるだけでも膨大な費用がかかり、遠征費の負担は親世代に重くのしかかる。「それなら自分が汗をかいて、子どもたちが跳べる環境を作ればいい」。そのシンプルな答えが、彼を厨房と催事場へと向かわせたのだった。
「売上はすべて次世代の空へ」パイ生地に練り込まれた泥臭い支援の美学
通常、有名アスリートのセカンドキャリアといえば、解説者や指導者、あるいは講演活動が一般的だ。しかし船木が選んだのは、自ら商品を企画し、製造・販売までを手がける実業家としての道だった。しかもその目的は自身の富の蓄積ではなく、全額に近い還元である。
「頭を下げて資金を集めるくらいなら、美味しいものを作ってお客さんに喜んでもらい、その対価で子どもたちを応援したい」。そう語る彼の言葉に嘘はない。1個のパイが売れるたびに、未来のオリンピアンが装着するヘルメットやワックス、海外遠征の航空券へと姿を変えていく。この循環システムこそが、15年以上にわたってこの活動が支持され続ける最大のエンジンだ。
行列を呼ぶのは話題性だけじゃない。本物志向の舌をうならせる「極上の味」

どれほど志が高くとも、味が伴わなければリピーターはつかない。このアップルパイが全国各地でリピートされ続ける最大の理由は、圧倒的なクオリティの高さにある。
ゴロゴロと贅沢に詰まった国産リンゴのシャキシャキとした食感と、ほどよい酸味。それを包み込むのは、何層にも折り重なった香ばしいサクサクのパイ生地だ。シナモンをあえて控えめに設定することで、子どもからお年寄りまで誰もが毎日でも食べられる素朴で上品な味わいに仕上げられている。冷めてもサクサク感が損なわれない独自の製法は、まさに妥協を許さないアスリートならではのこだわりが詰まっている。
催事場に広がる熱気と笑顔、ファンを魅了する神対応の現場
売り場に立つ船木の姿を見れば、誰もが驚く。有名人ぶった素振りは一切なく、手際よくパイを袋に詰め、お釣りを選び、一人ひとりの目を見て「ありがとうございます」と声をかける。サインや写真撮影にも気さくに応じるその姿勢は、まさに神対応そのものだ。
「長野五輪のとき、テレビの前で応援していました」「子どもがジャンプを始めました」といったファンの声援援に、彼は嬉しそうに耳を傾ける。買い手は美味しいパイを手に入れ、売り手は若手支援の資金を得て、ファンはヒーローと直接触れ合う。そこには、現代のデジタル社会が忘れかけていた温かな人間模様が存在している。
2026年ミラノ・コルティナの舞台裏で結実した、18年間の小さな積立金
2026年、イタリアの地で開催されるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピック。この大舞台の滑走路に立つ若手選手の中には、幼少期に船木の支援を受けて成長した世代が含まれている。
「あの時、用具を買ってもらえなかったら競技をやめていたかもしれない」。そう語る若者たちが、今や世界の頂点を目指して大空へ飛び立っていく。1個のアップルパイから始まった草の根の活動が、20年の時を経て大きな大樹となり、日本ジャンプ界の層を確かに厚くしたのだ。彼のまいた種は、確実に芽吹き、大きな花を咲かせている。
アスリートのセカンドキャリアに新風。「名声」よりも「未来」を育てる覚悟
船木和喜が切り拓いたセカンドキャリアのモデルは、スポーツ界全体にとっても大きな提示となっている。過去の栄光にすがるのではなく、自らの手で新たな価値を生み出し、それを次世代の社会還元へとつなげる生き方だ。
「パイを焼くのも、ジャンプを跳ぶのも、準備と集中力がすべて」。そう笑う金メダリストの背中は、かつて白馬のジャンプ台で見せたあの美しい飛行姿と同じくらい、輝いて見えた。次に彼のアップルパイに出会ったときは、ぜひ焼きたての香ばしさとともに、その背景にある熱いストーリーも味わってみてほしい。 (出典: 船木 和 喜 アップル パイ(Yahoo!ニュース))