追浜の日産工場で何が起きているのか?新設備と極秘試乗に迫る
追浜 日産の広大な敷地に足を踏み入れると、かつてのエンジン高回転音が嘘のように、澄んだ空気と電子制御アームの静かな稼働音が支配していた。半世紀以上にわたり日本のものづくりを牽引してきた日産追浜工場がいま、世界中の自動車メディアから熱い視線を浴びている。次世代EVの集中生産ラインが本格稼働を開始し、工場全体のスマート化と脱炭素化が極限まで推し進められているからだ。
神奈川県南部に位置し、海風が通り抜ける臨海部。歴史的にも国内有数の車造りの街として知られるが、現在の追浜 日産を取り巻く環境は、かつてないスピードで進化を遂げている。単なる車両組み立ての場にとどまらず、最先端の生産技術を世界中の拠点へと伝播させる「マザープラント」としての機能を一段と強化。日本の製造現場が直面する課題に対する明確な解が、ここには提示されている。
EV生産拠点としての変貌と最新設備の衝撃

プレス工程から塗装、最終組み立てに至るまで、自動化率は従来モデルのラインと比べて格段に向上している。日産自動車株式会社が長年蓄積してきた匠の技術はデジタルツイン技術へと移植され、数ミリのズレも許さない精度でボディが組み上げられていく。特に注目すべきは、電動化パワートレインの可変生産システムだ。
1つのラインでピュアEVと自慢の独創システムであるe-POWER搭載車がスムーズに交差して流れていく光景は、圧巻の一言に尽きる。エネルギー効率を極限まで高めた塗装ラインの導入や、再生可能エネルギーを活用した工場運営など、環境配慮の徹底ぶりも世界最高水準だ。現場のエンジニアは「ここは未来のクルマづくりの実証実験場でもある」と力強く語る。
テストコース「GRANDRIVE(グランドライブ)」独占試乗レポ

工場に隣接する極秘のテストコース、GRANDRIVE(グランドライブ)へ特別に足を踏み入れた。全長約2.4キロメートルの周走路には、世界各地の多様な路面が再現されている。ここで開発車両の走行テストを担当するテストドライバーの手により、最新の安全運転支援技術ProPILOT(プロパイロット)の高度な制御ロジックが極限まで鍛え上げられている。
バンクのついた高速コーナーをノーズが吸い込まれるように曲がっていく様子は、運転支援システムというより熟練ドライバーの直感がマシンに移乗したかのようだ。急激なレーンチェンジでも車体の揺れは瞬時に収まり、搭乗者の不安を微塵も感じさせない。このテストコースで積み重ねられた幾重もの走行データこそが、日産の先進安全技術の揺るぎない礎となっている。
横須賀市の地域経済と自動車製造業への波及効果

追浜の変容は、工場敷地内だけの話にとどまらない。地元である神奈川県横須賀市の街並みや地場産業にも、かつてない大きな波紋を広げている。サプライチェーンを構成する部品メーカーから地元の物流業者、飲食・サービス業に至るまで、巨大工場の稼働状況は地域全体の活気に直結している。
少子高齢化や産業構造の変化に悩む地方自治体が多いなか、先端技術を結集した工場が存在することは地域経済の強烈な牽引力だ。日本の伝統的な自動車製造業が、単なるハードウェアの組み立てから高付加価値な情報・技術産業へと脱皮を図るプロセスにおいて、追浜のモデルケースは全国の工業都市から熱視線を注がれている。
「産業観光」としての新たな価値と見学ツアーのリアル
技術の進歩と同時に、工場が果たす新たな役割として脚光を浴びているのが産業観光の側面だ。かつては専門家や関係者向けだった工場見学が、現在では一般のクルマファンや教育関係者、さらには海外からの渡航客をも魅了するコンテンツへと進化している。
見学通路から見下ろす整然とした自動搬送車(AGV)の動きや、無駄のない作業員の所作はまるで洗練されたパフォーマンスのようでもある。自国の産業基盤を肌で感じ、最新のテクノロジーが身近な暮らしとどうつながっているかを体験できる学びの場として、社会的な存在価値は日増しに高まっている。
内田誠CEOが描く「次世代モビリティ」戦略と日産リーフのゆくえ
日産の最高経営責任者(CEO)である内田誠氏は、今後の電動化ロードマップにおいて追浜の役割を「変化の象徴」と位置付ける。かつて世界に先駆けて量産EVのパイオニアとして誕生した日産リーフが培ったノウハウは、いまや全社的なEVプラットフォームへと昇華された。
世界の電気自動車産業を巡る競争が激化の一途を辿るなか、次世代モビリティの標準をいかにして打ち立てるか。ソフトウェアとハードウェアが極めて高い次元で融合するこれからの自動車開発において、歴史ある追浜の地が果たす役割は、過去のどの時代よりも重く、そしてエキサイティングだ。 (出典: 追浜 日産(Yahoo!ニュース))