ジブリパーク開園から4年、日本一若い街が挑む「行政DXと住民サービスの未来」——長久手市役所の現場を行く【2026年最新ルポ】
長久手 市役所の本庁舎に足を踏み入れると、従来の「お役所」が抱える暗いイメージはどこにも見当たらない。ガラス張りのエントランスからは心地よい陽光が差し込み、総合案内の周囲には案内用のスマートタブレットを手にした職員がにこやかに佇む。愛知県長久手市。かつて全国の市町村で平均年齢が最も低い「日本一若い街」として脚光を浴び、2022年のジブリパーク開園を機に世界的な知名度を得たこの自治体はいま、行政手続きのデジタル刷新において日本のトップランナーへと駆け上がろうとしている。
急激な人口流入が落ち着きを見せた2026年の現在、持続可能な行政運営と市民満足度の両立を目指す長久手 市役所の取り組みは、全国の地方自治体から熱い視線を注がれている。マイナンバーカードと連携した「書かない窓口」の導入、土日祝日のオンライン申請拡充、そして観光客増加に伴う交通混雑対策——。激動の時を迎えた現地で何が起きているのか。報道記者の目線でその最前線を取材した。
1. 窓口の「待ち時間ゼロ」へ!AI・DX導入で激変した本庁舎のリアル

かつては月曜日の朝や年度替わりの時期になると、住民票の交付や引っ越しの届出で長蛇の列ができていた。しかし、現在の本庁舎1階ロビーにその光景はない。
市が推し進めてきた「書かない・待たない窓口」システムが完全運用へと移行したためだ。来庁者は事前予約アプリで取得したQRコードを発券機にかざすだけ。住所や氏名があらかじめ印字された申請書が自動出力され、手書きの手間は大幅に削減された。職員の入力作業も従来の3分の1以下の時間に縮小している。
「以前は30分待ちが当たり前でしたが、今は受付から受け取りまで5分もかかりません。子育て中で時間が惜しいので本当に助かります」。生後6か月の子どもを抱っこ紐で抱えた30代の女性住民は、笑顔でそう語った。テクノロジーが住民の貴重な時間を奪わない行政を実現しつつある。
2. マイナ保険証からオンライン各種申請まで:2026年最新の行政手続きガイド

2026年現在、オンラインで完結する行政手続きの割合は8割を超えた。税証明の発行、子育て関連の各種手当申請、保育園の入所手続きに至るまで、スマホ一つで24時間いつでも完了する仕組みが整っている。
特に注目すべきは、マイナ保険証を活用した医療・福祉関連の連携強化だ。市役所の国民健康保険課では、専用端末を使ったデータ同期により、高額療養費の限度額適用認定などが即時完了する。かつてのように別々の窓口を何往復もする光景は過去のものとなった。
もちろん、デジタル機器の操作に不安を抱く高齢者や障害者へのフォローも抜かりない。フロアマネージャーとして配置された専任スタッフが、マンツーマンでタブレット操作をサポート。「デジタル化の真の目的は、支援が必要な人へと職員の手をしっかり差し向けること」。情報推進課の担当者はその理念を熱く語る。
3. ジブリパークとの共存戦略:観光客と市民生活を両立させる市役所の試み

愛・地球博記念公園内に位置する「ジブリパーク」が開園して4年。世界中から訪れる観光客の波は、長久手市の日常を一変させた。市役所にとっても、地域経済の活性化と生活環境の保全という相反する課題への対応は最大のテーマであり続けている。
観光里山課と都市計画課が連携して導入したのが、リアルタイムの交通・混雑状況予測モニタリングシステムだ。市内の主要道路に設置されたセンサーとAI解析を組み合わせ、リニモ(東部丘陵線)への乗り換えや回避ルートをスマホアプリ経由で来訪者および市民に即座に通知する。
さらに、ジブリ効果による税収増を、地域の公園整備や通学路の安全対策、子育て支援予算へと直接還元する「還元型予算編成」を明文化。観光の恩恵をしっかりと市民の暮らしへ還元する循環構造を作り上げた。
4. 子育て世代を逃さない!「日本一若い街」の次世代型支援制度と相談窓口
長久手市を語る上で欠かせないのが、高い出生率と若い世代の転入だ。しかし、都市化に伴い親族と離れて暮らす核家族が増加したことで、育児の孤立化が新たな社会課題として浮上していた。
これに対し、市役所こども家庭課が主導して立ち上げたのが、包括的子育て相談窓口「ながくてすくすくステーション」だ。母子保健コーディネーターと社会福祉士が常駐し、妊娠期から就学前までのシームレスな相談に対応する。
単なる相談対応にとどまらず、一時預かり事業のオンライン予約や、夜間・休日のオンライン小児医療相談ラインの開設など、子育て世帯のリアルなSOSに即応する体制を構築。「長久手で子どもを育ててよかった」と言わせる手厚い施策が、若い世代を引きつけ続ける原動力となっている。
5. 土日対応やアクセス・駐車場情報:市民生活を支える最新インフラ事情
平日に市役所へ行くことが難しい働く世代のために、開庁日やアクセス面でのアップデートも続けられている。毎月第2・第4土曜日の午前中には「土曜窓口」を開設し、住民票や印鑑証明の発行、戸籍の届出に対応している。
公共交通でのアクセスは、リニモ「長久手古戦場駅」または「杁ヶ池公園駅」からの市内巡回バス「N-バス」が非常に便利だ。交通系ICカードおよびQRコード決済に対応し、利便性が飛躍的に向上した。
自家用車での来庁者に向けては、本庁舎駐車場の混雑状況をWEB上でリアルタイム確認できるサービスを提供。満車時には周辺の提携駐車場への案内と割引サービスが自動適用される仕組みになっており、周辺道路の渋滞緩和に一役買っている。
6. 災害に強い街づくり:気候変動時代における防災拠点としての新機能
近年激甚化する気候変動や南海トラフ巨大地震への備えも、長久手市役所の重要な責務だ。本庁舎は免震構造を備えるだけでなく、災害時には地域防災の要塞として機能する設計がなされている。
敷地内には大容量の自家発電設備とLPガスバルクシステムを完備し、停電時でも最長1週間の行政機能を完全維持できる。さらに、庁舎前の広場には非常用マンホールトイレや応急給水設備が整備されており、避難所としての機能も万全だ。
「形だけの防災計画ではなく、発災時に市民の命を守り抜く即応体制こそが自治体の責務です」。防災課の担当者が語るように、デジタルによる効率化の一方で、こうしたハード面での堅牢な備えが市民の安心感を支えている。 (出典: 長久手 市役所(Yahoo!ニュース))