桃天然水やルーツの現在地!JT飲料事業撤退の真相と業界最新動向
jt 飲み物と聞けば、平成の青春を過ごした誰もが甘酸っぱい記憶と共に特定のドリンクを思い出すのではないだろうか。1990年代後半に空前のヒットを記録した「桃の天然水」や、男臭くもどこか洗練された世界観で缶コーヒー市場に一石を投じた「Roots(ルーツ)」。かつて街角のあちこちや駅のホーム、近所のコンビニエンスストアで当たり前のように買い求めていたこれらの商品は、私たちの日常に深く溶け込んでいた。
本来の本業であるたばこ製造業で圧倒的なシェアを誇る日本たばこ産業株式会社(JT)だが、自社ブランドの清涼飲料事業を展開していた歴史は意外にも長い。しかし、自動販売機の設置競争過熱や熾烈を極める清涼飲料水業界での利益確保の難しさから、同社は歴史的な決断を下す。かつて隆盛を誇ったjt 飲み物事業からの事業撤退・M&Aという劇的な幕引きだ。あれから歳月が流れた現在、伝説のブランド群はどこへ行き、どのような形で生き続けているのだろうか。
JT(日本たばこ産業)の飲料事業撤退の真相とは?決断の背景と構造改革

JTが清涼飲料事業からの撤退を正式発表したのは2015年のことだった。当時、多くの消費者が衝撃を受け、「あの桃天が飲めなくなるのか」「ルーツはどうなるのか」と悲鳴に似た声が上がった。だが、経営層の視線は冷徹かつ極めて合理的だったと言える。
日本たばこ産業株式会社の飲料事業は、傘下のジェイティフーズ株式会社などを通じて企画・販売を行っていた。しかし、日本の清涼飲料水業界は主要大手メーカーによるシェア争いが激化し、特に自販機網の維持コストやコンボイと呼ばれる物流費の高騰が収益を大きく圧迫していたのだ。本業のたばこ製造業が高い利益率を維持する一方で、飲料部門は赤字基調から脱却できず、選択と集中を迫られていた。
結果としてJTは、2015年9月をもって清涼飲料水の製造販売事業を終了。自販機オペレーター子会社の株式や一部ブランドを他社に売却する大規模な構造改革を実施した。この迅速な「切り離し」こそが、グローバルな事業展開を急ぐ同社にとって不可避な戦略的選択だったのだ。
「ヒューヒュー」で一世を風靡!華原朋美CMと『桃の天然水』が残した伝説

JTの飲料史を語る上で、絶対に外せないのが「桃の天然水」である。1990年代末、歌手の華原朋美を起用したテレビCMは大ブームを巻き起こした。彼女が可憐な笑顔で放つ「ヒューヒュー」というフレーズは流行語となり、桃天(ももてん)の略称で若者を中心に爆発的な売上を記録した。
当時、透明でありながらしっかりとした果実感を楽しめる「フレーバーウォーター」というジャンルは非常に新鮮だった。水感覚でゴクゴク飲めるスッキリとした甘さは、清涼飲料水業界に新たなトレンドを打ち立てたといっていい。桃の天然水は単なる商品を超えて、平成のポップカルチャーを象徴する文化アイコンとなったのだ。
坂口憲二のCMで愛された缶コーヒー『Roots』とジェイティフーズのこだわり

もうひとつの看板商品が、2000年に投入された缶コーヒーブランド「Roots(ルーツ)」だ。後発ブランドでありながら、俳優の坂口憲二らをCMに起用し、「飲む人の心をほぐす」というストイックかつ温かみのある世界観でファンを魅了した。
ジェイティフーズ株式会社が開発にかけた情熱は並々ならぬものだった。微糖やブラック、アロマの香りを閉じ込めたボトル缶など、独自の焙煎・抽出技術を惜しみなく投入。缶コーヒーの主要購買層である働く男性層から熱烈な支持を集めた。コンビニエンスストアの棚割り争いでも主要ブランドの一角として君臨し続けた名作である。
他社譲渡後の最新動向!サントリー食品インターナショナルが継承した自販機網
JTが飲料事業から撤退した際、最も注目されたのが「所有していた自販機網の行方」だった。喉から手が出るほど自販機のロケーションを求めていた清涼飲料水業界において、JTが所有していた約26万台規模の清涼飲料水自動販売機事業は絶好の標的となった。
争奪戦を制したのはサントリー食品インターナショナルだ。サントリーはJT子会社のジャパンビバレッジホールディングスを傘下に収め、自販機シェアで業界トップクラスへと躍進した。同時に、「桃の天然水」と「Roots」のブランド商標権もサントリーへ譲渡された。事業撤退・M&Aの手本とも言えるこの再編によって、旧JT自販機は現在サントリーの「BOSS」や「伊右衛門」を販売する主力拠点として全国で稼働している。
あの懐かしい味は今どこへ?ブランドの「現在地」と復刻を巡る物語
サントリーへ引き継がれた「桃の天然水」と「Roots」だが、その後の歩みは平坦ではなかった。サントリーは自社ブランド(BOSSや天然水シリーズ)とのシナジーを考慮しながら、一時期は「桃の天然水」を再発売するなどファンを喜ばせたものの、現在ではレギュラーラインナップとしての常時販売は行われていない。
しかし、SNSを中心に「もう一度あの桃天が飲みたい」「ルーツのアロマブラックを超える缶コーヒーに出会えていない」といった熱烈な声は絶えない。近年では昭和・平成レトロブームの波に乗り、期間限定の復刻販売やコラボ商品としてスポット登場するケースが見られる。懐かしの味は、形を変えながら今も消費者の記憶と市場の片隅で脈々と生き続けている。
清涼飲料水業界の2026年最新事情とたばこ製造業における未来像
飲料事業を売却してから時が経過した現在、日本の飲料市場は原材料費高騰や健康志向の加速、そして無人販売システムの進化という激変期を迎えている。たばこ製造業に資源を完膚なきまでに集中させた日本たばこ産業株式会社は、加熱式タバコ市場でのグローバルシェア拡大を順調に進め、経営基盤を一段と強固なものにした。
一方、飲料業界では環境負荷低減に向けたペットボトルのリサイクル技術や、ヘルスケア領域と融合した高付加価値ドリンクの競争が激化している。かつてJTが挑んだ「フレーバーウォーター」や「缶コーヒー」のDNAは、譲渡先のサントリーをはじめとする各社の新商品開発に深く息づいている。撤退という決断がもたらした経営資源の再配分は、結果として両業界の進化を加速させる契機となったのだ。 (出典: jt 飲み物(Yahoo!ニュース))