クラタスを買った人は誰?1.2億円ロボの現在と噂の真相を追う
クラタス 買っ た 人を探す取材を始めると、ネット空間を数年おきに駆け巡る都市伝説と、実在するハードウェアの熱量が交錯する地点に行き着く。2012年、造形作家の倉田光吾郎氏とロボット研究者の吉崎航氏が結成した「水道橋重工」が発表した搭乗型巨大ロボット「クラタス(KURATAS)」。Amazon.co.jpの日本版サイトで約1億2000万円という衝撃的な価格で出品されたあの鉄の巨体は、一発の打ち上げ花火ではなく、世界中のテクノロジーファンを歓喜させるロマンの塊だった。
当時のECサイト上でカートに商品を入れ注文を確定させようとした猛者は数知れないが、実際に個人宅へ納品され「クラタス 買っ た 人」として世間に名乗りを上げたコレクターは、実のところ長年ヴェールに包まれてきた。だが、購入者の有無を超えてクラタスが社会に与えたショックは計り知れない。SF・先端テクノロジーの世界にしか存在しないと思われていた全高4メートルの鉄塊が、リアルな可動系システムとしてロボティクス産業の表舞台に突然降臨したからだ。
Amazonで1.2億円のクラタスを買った人は誰?噂の真相

2015年1月、Amazon.co.jpの販売ページに「クラタス」が姿を現した日のことを覚えているだろうか。本体価格は1億2,000万円。しかも「関東への配送料 350円」というシュールな表記まで添えられていた。レビュー欄は即座にお祭り状態となり、「エアコンがオプションなのが残念」「スーパーの駐車場に入らない」といったジョーク投稿が殺到した。
では、実際にクレジットカードを決済して購入した人物はいたのか。取材を進めると、システム上の「注文ボタン」を押した者は複数存在したものの、一般的な個人クレジットカードの限度額を遙かに超える金額であったため、即時自動決済に至ったケースはゼロに等しい。しかし、海外のテック系億万長者やIT企業の経営者、さらにはイベント興行主から水道橋重工へ直接の購入打診や特注オファーが複数寄せられたのは事実である。一部の機体や派生パーツは展示・研究用として法人の手に渡っており、「個人がガレージに飾っている」という噂の裏には、こうした大口顧客の存在が見え隠れする。
日米巨大ロボット対決の舞台裏とMegaBotsとの死闘

クラタスの名を世界中に轟かせた最大のトリガーは、アメリカのロボット開発チーム「MegaBots(メガボッツ)」からの挑戦状だった。2015年、米国チームがYouTube上に公開した動画で煽り立てたのに対し、倉田光吾郎氏は即座にレスポンス動画を投稿。「巨大ロボットは日本文化だ。海外のチームに負けるわけにはいかない」と言い放ち、あえて自銃による撃ち合いではなく「格闘戦」での決着を要求した。
2017年10月、廃工場を舞台に繰り広げられた「日米巨大ロボット対決」は、YouTubeを通じて全世界に配信された。クラタスの一撃必殺のパンチがメガボッツの初代マシンを粉砕した瞬間、画面越しに世界中のファンが歓声に包まれた。エンターテインメントと本格工学が融合したこの一戦は、搭乗型巨大ロボット史における最高のハイライトとして歴史に刻まれている。
制御システムV-Sidoが吹き込んだ生命と技術的到達点

クラタスが単なる張り子の虎に終わらなかった最大の勝因は、その頭脳にあった。ロボット研究者である吉崎航氏が開発したロボット制御ソフト「V-Sido(ブシドー)」の存在だ。複雑な多関節の重量物を、コックピット内のマスタースレーブ装置やスマートフォンから流暢かつリアルタイムに操縦できる革新的なアルゴリズムが組み込まれていた。
倉田氏の手による無骨で美しい鉄の装甲と、吉崎氏が生み出した先進的なソフトウェア。この異色の才能のタッグがあったからこそ、重さ約4.5トンもの鉄塊が、搭乗者の意志に応じて滑らかに腕を突き出し、車輪駆動で街を駆け抜けることが可能になったのである。
2026年現在のクラタスの所有状況と保管場所の謎
かつて世界を沸かせたクラタスは、今どこでどうしているのか。ライバルであった米国のMegaBots社が2019年に破産手続きを行い、オークションサイトでマシンが売りに出されたのとは対照的に、クラタスはその価値を崩すことなく大切に保持されている。
2026年現在、オリジナル機体は水道橋重工の関連施設および厳重に管理されたワークショップ内に保管されており、定期的なメンテナンスが施されている。一般道での公道走行やBB弾ガトリングガンの実効性といった法規上の壁があったため、大量生産や日常的な自家用車としての流通には至らなかったものの、日本のものづくりスピリットを象徴するレジェンド機体として、産業博物館や研究機関への貸し出し展示が今も続いている。
搭乗型巨大ロボットが切り拓いたSF・先端テクノロジーの未来
クラタスが開拓した道は、現在のロボティクス産業に計り知れない影響を与えた。単なる夢物語だった「人間が乗り込んで操作する大型メカ」という概念が、現実の工学的課題として捉え直されるようになったのだ。
近年話題を集めるツバメ工業の「ARCHAX(アーキアックス)」をはじめとする最新鋭の乗用ロボットや、建設現場・災害現場で導入が進むアバター型の重機システム。これらに携わる新世代のエンジニアたちの多くが、かつてクラタスが見せた熱狂に衝撃を受けた世代である。クラタスは一過性のトレンドではなく、現実世界とSFの境界線を破る「技術の架け橋」だった。
クラタスが遺した夢と2026年最新のロボティクス動向
「1.2億円で巨大ロボットを買う」という突拍子もないストーリーは、ネット上の都市伝説を超えて、技術者たちの情熱が勝ち取った本物のドラマだった。実際に個人で買い取った人物の特定を探る旅は、日本のクリエイターたちが世界に叩きつけた挑戦状の記録にたどり着く。
2026年の今、ロボット工学はAIの進化やバッテリー技術の飛躍によってさらなる高みへシフトしている。しかし、冷たい鉄に魂を吹き込み、自分の手で動かすというロマンの原点は、あの4メートルの鉄塊「クラタス」の中に今も色褪せることなく脈打っている。 (出典: クラタス 買っ た 人(Yahoo!ニュース))